『アンメット ーある脳外科医の日記ー』は、2021年「モーニング」(講談社)で連載されている医療漫画です。原作は子鹿ゆずるさん、漫画は大槻閑人さんが担当し、脳外科医の世界をリアルに描きます。
2024年4月には杉咲花主演でドラマ化もされ、話題を呼んでいます。
この記事では、アンメットのあらすじを解説し、アンメットの魅力を余すところなくご紹介します。
「アンメット」のあらすじ
『アンメット ーある脳外科医の日記ー』は、2021年2月・3月合併号「モーニング」(講談社)で連載が開始されました。
作者は「子鹿ゆずる」さんで、漫画は「大槻閑人」さんが担当しています。
この物語は、脳外科医である主人公の三瓶友治が、記憶障害を抱える同僚の川内ミヤビと共に、脳疾患に苦しむ患者たちと向き合う医療ドラマです。
アメリカで問題を起こし、日本の丘陵セントラル病院に移動してきた三瓶は、常識を超えた型破りな医師であり、ミヤビの治療や他の患者の治療を通じて、医療現場のリアルな現実と葛藤を描いています。
「アンメット」1巻~2巻のあらすじ
第1巻では、アメリカの病院で問題を起こした脳外科医の三瓶友治が、日本の丘陵セントラル病院に移動するところから物語が始まります。彼は常識を超えた型破りな医師で、仮眠室に住みつき、空気を読まないワーカホリックな一面を持っています。彼が向き合うのは脳だけでなく、患者の人生そのものです。
この巻では、「脳内血腫」「第4脳室腫瘍」「失語症」などの症例が描かれ、脳疾患がもたらす麻痺や記憶障害、失語症といった問題に取り組む様子がリアルに描写されています。元脳外科医の経験を基にした描写が、医療現場のリアリティを強調しています。
第2巻では、脳疾患に苦しむ患者とその家族、そして医療スタッフの間で繰り広げられる人間ドラマがさらに深く描かれます。三瓶は、脳外科医としての高度な技術と独特の視点で、さまざまな症例に対応し続けます。この巻では、「未破裂脳動脈瘤」のジレンマや、「脳ドック」による診断の難しさが取り上げられ、治療を選択する際の医師と患者の葛藤が描かれます。
さらに、医療チームの中での人間関係も描かれ、麻酔科医の成増貴子や、看護師長の津幡玲子とのやり取りが物語に厚みを加えています。成増は、緊張感のある場面でも和ませる役割を果たし、津幡は医療安全委員会に所属し、病院内の調整役として重要な役割を担っています。
「アンメット」3巻~4巻のあらすじ
第3巻では、脳外科医の三瓶友治が新たな症例に取り組む様子が描かれています。くも膜下出血で運ばれてきた女性患者が脳死状態となり、三瓶と同僚の星前宏太は家族に延命治療を行うか否かの重い決断を迫ります。三瓶は冷静に説明を行い、家族が自身で決断を下すためのサポートをしますが、星前はその無感情な態度に抵抗を感じつつも、医療現場の現実を受け入れていく姿が描かれています。また、三瓶の同僚である川内ミヤビも登場し、脳に関する様々な問題に向き合う様子が描かれています。
第4巻では、記憶障害を抱える川内ミヤビの回復過程が中心となります。徐々に回復の兆しを見せるものの、些細なミスが続き、完全な復帰にはまだ時間がかかることが示唆されます。一方で、三瓶は川内の知り合いである飲食店の女将が脳に病気を抱えていることを発見し、検査を進めるよう勧めます。三瓶の医師としての冷静さと優れた判断力が描かれ、医療現場での厳しい現実と患者との向き合い方が強調されます。また、他の医療スタッフとの関係性や病院内の人間ドラマも描かれ、物語に深みを与えています。
「アンメット」5巻~6巻のあらすじ
第5巻では、医療現場における細かなミスがどのようにして患者の命に影響を与えるかに焦点を当てています。川内ミヤビは記憶障害を克服しつつ、懸命に医療現場で働いています。そんな彼女を厳しく指導する看護師長の津幡も、過去の医療事故のトラウマを抱えています。この巻では「スイスチーズモデル」や「一過性全健忘」「もやもや病」といった症例が紹介され、三瓶は高度な技術を要する血管吻合術にミヤビを指名します。医療事故のメカニズムやその真因に迫るストーリーが展開され、医療現場の現実と緊迫感が描かれています。
第6巻では、川内ミヤビの抗てんかん薬の服用が明らかになり、その背景にある記憶障害と失われた記憶の真相に迫ります。三瓶は、主治医である大迫教授に疑念を抱き、関東医大の綾野と協力して真相を解明しようとします。「抗てんかん薬」「側頭葉てんかん」の症例が収録されており、ミヤビが術者としての経験を積み、医師としての自信を深める過程が描かれます。また、記憶障害の背景にある隠された真実が徐々に明らかになり、医療現場での複雑な人間関係が物語に深みを与えています。
「アンメット」7巻~8巻のあらすじ
第7巻では、脳ドックの結果から未破裂脳動脈瘤を抱える患者が登場します。破裂率が低く、手術にはリスクが伴う場合、患者は手術を選ぶべきかどうか悩みます。三瓶や仲間たちの協力により、抗てんかん薬の増量で記憶力を回復させた川内ミヤビが中心に描かれます。しかし、部分的な記憶の回復はかえって彼女に混乱をもたらし、自信を失わせてしまいます。関東医大の綾野と共に行った手術が、新たな記憶を呼び起こし、ミヤビの心情に大きな影響を与えます。物語は、手術のリスクと患者の選択というテーマに焦点を当て、脳外科医の厳しい判断の現実を描いています。
第8巻では、ミヤビの記憶障害とその背後にある真実がさらに掘り下げられます。助手として参加した手術を通じて、ミヤビはかつて綾野から告白されたことを思い出し、二人で過去を辿りさらなる記憶を取り戻そうとします。しかし、その過程でミヤビの婚約者である三瓶が現れ、複雑な三角関係が浮かび上がります。一方、西島グループによる綾野病院の再編計画も進行し、医療現場と経営の狭間で揺れる医師たちの葛藤が描かれます。この巻では、「スポーツ関連脳震盪」「神経膠芽腫(グリオブラストーマ)」「ラクナ梗塞」の症例が取り上げられ、医療の最前線で戦う医師たちの姿が鮮やかに描かれています。
「アンメット」9巻~10巻のあらすじ
第9巻では、丘陵セントラル病院に新たに言語聴覚士の五十嵐詩織が加わります。彼女は非常に優秀であり、他の医師たちからも一目置かれる存在です。しかし、ミヤビは自身の障害と向き合いながら、次第に患者へのアプローチの方法を見つけ出していきます。この巻では、「ウェルニッケ失語」と「びまん性軸索損傷」の症例が取り上げられます。地域医療構想会議の開催が迫る中、丘陵セントラル病院の未来を左右する重要な議論が行われます。また、ミヤビは自らも障害を抱えるからこそできる患者へのアプローチを見出し、自己の成長を感じさせる展開が描かれています。
第10巻では、脳外科医たちが倫理的な問題に直面します。トロッコ問題のような倫理的なジレンマが描かれ、五人を救うために一人を犠牲にするべきかという問題が浮上します。三瓶たちは、医療の現場で実際に直面することになるこの種の困難な決断について議論します。また、地域医療構想と病院の再編成についても重要な展開があります。「地域医療構想」「穿通外傷」といったエピソードが収録されており、医療現場の複雑な現実とそれに取り組む医師たちの姿が詳細に描かれています。医療の倫理的側面や現実の厳しさが際立つ内容となっています。
「アンメット」11巻~12巻のあらすじ
第11巻では、医学的にメスを入れてはならない領域「No Man’s Land(ノー マンズ ランド)」がテーマとなります。日本における脳血管疾患の患者数はおよそ112万人に上り、多くの患者が何らかの後遺症と闘っています。この巻では、新たに迎えた綾野とともに、記憶障害を抱えるミヤビが中心となり、彼女が患者へのアプローチ方法を模索する姿が描かれます。また、複雑な医療ケースとして「無人地帯」を舞台にした手術が行われ、医師たちが倫理的・技術的な限界に挑む様子が緊迫感をもって描写されています
第12巻では、昭和40年の高度経済成長期の日本を背景に、知能に障害を持つ子供たちが「精神薄弱」と呼ばれていた時代の医療現場が描かれます。この巻では、過去に引き起こされた交通事故や脳疾患患者の後遺症をテーマにし、その患者たちがどのように社会と向き合い、生活を再構築していくのかが焦点となります。ミヤビや三瓶が医療の現場で直面する様々な倫理的な問題や技術的な挑戦が描かれ、医療従事者としての責任と患者の人生への深い理解が求められるストーリーが展開されます。
「アンメット」13巻~14巻のあらすじ
第13巻では、過去に引き起こされた交通事故と、その後遺症を抱える脳疾患患者に焦点が当てられます。特に、自動車運転が許されるかどうかという倫理的な問題が取り上げられます。脳血管疾患の患者数は日本でおよそ112万人に上り、多くが後遺症と戦っています。この巻では、大迫教授の証言により辞任を余儀なくされた西島会長の後、丘陵セントラル病院の再編成が進行中です。ミヤビは看護補助業務を卒業し、脳外科に専念することになります。さらに、脳外科を救急部から独立させ、新たな脳外科部長を迎える計画も進行中です。作業療法士の今市太郎が新たに加わり、言語聴覚士の五十嵐と治療方針を巡って対立する場面が描かれます 。
第14巻では、脳疾患患者の社会復帰に関する問題が深く掘り下げられます。特に、脳疾患患者が交通事故を引き起こした場合の社会的責任や医療的対応が描かれます。記憶障害や運動機能の回復に向けたリハビリテーションの過程が詳細に描かれ、患者と医療スタッフの間に生まれる絆が強調されます。ミヤビや三瓶が直面する倫理的な問題や、患者の人生に寄り添う姿勢が一層際立つ内容となっています。この巻では、「認知機能の回復」「社会復帰」といったテーマが取り上げられ、医療の現場でのリアルな挑戦が描かれます。
「アンメット」15巻のあらすじ【最新巻】
第15巻では、脳外科医としての自信を取り戻しつつあるミヤビが、医療の現場で直面する現実と向き合います。日本にはおよそ112万人の脳血管疾患患者が存在し、多くが何らかの後遺症と闘っています。この巻では、非正規滞在を余儀なくされた外国人が日本の医療サービスを十分に受けられない現実が描かれています。
物語は、三瓶らが社会に潜む障壁と支援されることで生きる力を失っていく人々を目の当たりにする場面から始まります。交通事故の加害者と被害者の間に生じる倫理的な問題も深く掘り下げられ、被害者が患者会の活動に傾倒していく一方で、加害者は贖うことのできない罪に苛まれていく様子が描かれます。また、ミヤビに訪れるわずかな変化が、物語の重要な転機となります 。
この巻には、「脳膿瘍」や「びまん性脳腫脹」の症例が収録され、医療現場の厳しい現実と複雑な人間関係がリアルに描かれています。脳外科医としての使命感と患者の人生に寄り添う姿勢が一層際立つ内容となっています。
「アンメット」 の登場人物・キャラクター
三瓶友治(さんぺい ともはる)
主役の脳外科医で、アメリカの病院でトラブルを起こし、日本の丘陵セントラル病院に転任。仮眠室に住みつき、空気を読まない型破りでワーカホリックな性格です。彼は脳外科医としてだけでなく、患者の人生全体に向き合うことを重視しています。
川内ミヤビ(かわうち みやび)
記憶障害を抱える脳外科医。1日の記憶しか保持できず、以前は三瓶と婚約していました。後遺症を抱えながらも患者に寄り添う姿勢を持ち続けています。
成増貴子(なります たかこ)
丘陵セントラル病院の麻酔科医。学生時代は「女帝」と呼ばれており、マイペースでおっとりした性格で緊迫した場面でも和ませる役割を果たします 。
津幡玲子(つばた れいこ)
看護師長であり、医療安全委員会に所属。かつてはミヤビの指導にもあたっていました。
綾野楓(あやの かえで)
脳外科医で、血管内治療を得意とします。ミヤビの元恋人であり、病院の合併を経て西島麻衣と結婚しました 。
藤堂利幸(とうどう としゆき)
丘陵セントラル病院の院長。三瓶の破天荒な行動に悩まされながらも病院をまとめています。
大迫紘一(おおさこ こういち)
ミヤビの主治医で、関東医大脳外科教授。三瓶を嫌っています。
西島麻衣(にしじま まい)
関東医大同窓会長の孫娘で、綾野楓の妻。病院の財務を担っています。
五十嵐詩織(いがらし しおり)
非常勤の新人言語聴覚士。失語症患者のためのNPO設立を目指しています。
先崎彰(せんざき あきら)
胸部外科医で、少し面倒くさい性格ですが、実は愛妻家です。
三瓶とミヤビの関係とは?
三瓶とミヤビの関係の背景
川内ミヤビは、脳外科医として働く中で交通事故に遭い、記憶障害を抱えることになります。この障害により、彼女は過去2年間の記憶を失い、1日の記憶しか保持できなくなります。事故前、ミヤビは関東医大で働いており、同僚の綾野楓と関係を持っていましたが、綾野が他の女性と政略結婚することを知り、彼から距離を置くために三瓶に婚約者のふりをしてもらうことを頼んだのです。
三瓶友治はアメリカ帰りの優秀な脳外科医で、ミヤビの記憶障害を知った後、日本に戻ってきて彼女を助けます。三瓶は強引で変わり者ですが、その卓越した技術と診断能力により、ミヤビが再び脳外科医として立ち直るのを支えます。
ミヤビと三瓶の関係の発展
物語が進行する中で、ミヤビと三瓶の関係は次第に複雑さを増していきます。ミヤビは記憶を少しずつ取り戻し、過去に三瓶と婚約していたことを思い出しますが、それが偽りの婚約であったことも知ります。この記憶の断片を繋ぎ合わせる中で、ミヤビは感情的な混乱と戸惑いを経験します。
ストーリーへの影響
ミヤビと三瓶の関係は、物語の進行に大きな影響を与えます。ミヤビが記憶を取り戻す過程で、彼女の事故の背後にある真実や、主治医である大迫教授が絡む陰謀が明らかになります。大迫はミヤビの記憶障害が改善しないよう薬を調整し、彼女の記憶が戻ることを防いでいたのです 。この陰謀を三瓶が暴こうとする中で、彼とミヤビの関係はさらに深まり、二人が共に真実を追求していく姿が描かれます。
感情と動機
三瓶はミヤビに対して強い責任感を持ち、彼女の回復を支えることに全力を尽くします。一方、ミヤビは自分が事故を起こした原因を知りたいという強い欲求と、自分が再び脳外科医としての自信を取り戻したいという思いに駆られています。この二人の動機と感情が絡み合い、物語に深みを与えています 。
ファンの考察と意見
ファンの間では、ミヤビと三瓶の関係について多くの考察がなされています。二人の偽りの婚約がどのように発展するのか、そしてそれが物語の結末にどう影響するのかについての議論が盛んです。また、大迫教授の陰謀や、他のキャラクターとの関係性についても多くの意見が交わされています。
「アンメット」タイトルの意味とその背景
『アンメット ーある脳外科医の日記ー』のタイトルである「アンメット(Unmet)」は、「満たされない」、「未解決」という意味を持つ英語から来ています。
このタイトルは、物語の主題やキャラクターの状況を深く反映しており、以下にその意味と背景を詳しく説明します。
タイトルの意味
「アンメット」は、医療用語としても使われる言葉で、「アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)」を指します。
これは、まだ治療法が見つかっていない病気に対する医療ニーズを意味します。
医療の現場では、多くの患者が適切な治療法を待ち望んでいる状態を表しています。
タイトルの由来と物語との関連
『アンメット』の中で、三瓶友治がこの言葉を最初に口にします。
彼は「どうすれば、すべての患者を救えるだろうか」と考え、医療者としての使命感と限界を感じる中で「アンメット」という言葉を使います。
このタイトルは、医師たちが直面する課題や、患者の「満たされない」状態を象徴しています 。
作者の意図とメッセージ
原作者の子鹿ゆずるさんは、作品を通じて「本当の意味での共生社会の大切さ」を伝えたいと語っています。
子鹿さんの経験に基づき、重度の障害を持つ兄が施設に入らざるを得なかった状況から、社会が抱える問題点を描いています。
タイトル「アンメット」は、こうした「満たされない」状況を描くことで、読者に深い考察を促します。
タイトルの影響と象徴
タイトル「アンメット」は、物語全体にわたって重要なテーマとして機能しています。
脳外科医のミヤビが記憶障害を抱えながらも、医師としての使命を果たそうとする姿は、まさに「満たされない」状態と戦う人々の象徴です。
また、医療現場の現実と人間ドラマを通じて、読者に強いメッセージを伝えています 。
「アンメット」はどこで読める?配信サイト一覧
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まとめ
『アンメット ーある脳外科医の日記ー』は、その深いテーマ性とキャラクターの魅力で多くの読者を引きつけています。
型破りな脳外科医、三瓶友治と記憶障害に苦しむ同僚川内ミヤビの奮闘を描き、医療の現実と人間ドラマを鮮やかに描き出しています。
最新巻では、三瓶とミヤビの関係がさらに深化し、彼らが直面する新たな医療的挑戦や大迫教授との対立がクライマックスに向かって盛り上がりを見せています。